京都DARCでは、「家族ケア」として、依存症者の家族の方(以下「家族」)の心理教育グループ「家族プログラム」、個人カウンセリング、家族ためのワークショップを行っています。これらのサービスを有料化することも検討しましたが、私たちは無料で提供することにしました。
薬物依存症(以下「依存症」)に陥ると、薬物の問題を持つ人(以下「依存症者」)は、病気が進行するにつれ、「薬物を手に入れること」が何より大事になってしまいます。そのために、家族は様々な問題に巻き込まれることになります。そのなかでも、「お金のトラブル」は必ずといっていい程、引き起こされる問題です。例えば、依存症者は薬物を手に入れるためにいろいろな人や機関に借金をすることがよくあります。そして、依存症者が返済できない場合は、その借金の返済を家族が求められることが多いのです。たとえ法律的には、保証人になっていないから「払わない」と言えるとしても、多くの家族は“ここでちゃんと返済しておかないと、将来的にこの子が困ることになるのではないか”などの依存症者が薬物使用と止めた後に「困った事態」にならないようにという気持ちや不安から、借金を肩代わりする場合があります。また返済の督促の電話が頻繁にかかってきたり、督促に家まで来られたりすることで家族自身の生活が脅かされ、“返済するしか道がない”と追い詰められてしまうことなども多くあります。なかには、依存症者が借金をした相手が親戚や家族の知人など、これからも付き合いを続けていく人だから“返さざるえない”場合もあります。本当は、保証人になっていなければ支払う義務はありませんし、家族に返済を求めたり督促したりするのは法律違反です。それでも、法律を知らなかったり、人間関係を壊したくない気持ちから、このようなトラブルに巻き込まれることが1回だけではなく、何回も起きます。その結果、家族のなかには、財政的に非常に厳しい状況に置かれる方も多くいらっしゃるのです。
私たちは、身近な人の依存症問題で、心理的ケアを必要としている方は、みなさんが平等に「必要としているサービスを受ける権利」があると考えました。例えば個人カウンセリングを、1時間5000円と有料にすると、その金額を払える方しか京都DARCに来ることができなくなってしまいます。家族のなかには、それを知った時点で、京都DARCで心理ケアを受けることを諦めてしまわれる方も多いと思います。また、京都DARCを訪れる家族に「あなたの財政状況はどのなっていますか?」と、収入や支出などの細々した部分をお聞きすることにより、“なんで、こんなとてもプライベートなことまで聞かれなくちゃいけないんだろう? 依存症者の家族だからか…”と思われる方もいらっしゃると思います。それは様々な傷つきを抱えた家族を、さらに傷つけてしまうことにもつながりかねません。私たちは、このように「限られた人しかサービスを受けられない状況を作ってしまうこと」や「サービスを受けるにあたっての関門を設けること」は避けたいと思いました。だから、依存症の問題で困ってヘトヘトになりながら、京都DARCに来て下さった家族の方みなさんに、必要とされる心理ケアを無料で提供しようと決めました。
しかし、京都DARC自体が、強靭な財政基盤をもつ団体ではありません。これらのサービスを無料で提供する財政的な負担を背負いながら、他の活動も行うことは、京都DARCの財政状況を圧迫してしまいます。私たちの趣旨をお汲み取りいただき、この事業へのご支援をお願い申し上げます。
家族ケア(地域創造基金)
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